47名91句 森山文切選 | ||
一回もいいねを押したことが無い | 龍せん | |
さびしさとかくれんぼする 結末 | 斎藤秀雄 | |
妻が留守心行くまでパラダイス | 折鶴翔 | |
鳥に名をつければいいと思わない | たぶん | |
消しゴムじゃ消せぬ思い出炎上す | あまの太郎 | |
グローブと盃が要るボクシング | よーこ | |
空落ちる気配で雨を手のひらへ | 霧島龍 | |
また猛暑ノルマ棚上げ万歩計 | 敏治 | |
ビールより贅沢過ぎるかき氷 | 彦翁 | |
盲点を突かれてぬるい茶にむせる | 藤沢修司 | |
きりのいいとこでおしまいなんて夢 | 麦乃 | |
猫だって散歩もしない島の夏 | 心咲 | |
素手よりも福神漬けで黙らせろ | 秋鹿町 | |
老いの目に滲んだ火星らしきもの | 枯山水 | |
表から雨の上がった音がする | ヨッシー | |
椅子取りを始めた日から仲間割れ | なごみ | |
明け方にぴょきょきょきょきょーと鳴く仕事 | 平出奔 | |
海亀の産卵 闇の破裂音 | 福村まこと | |
頸椎をトントン落ちていく詭弁 | くに | |
ドロドロの酒呑み 二日ばかり白 | 藤井智史 | |
猛暑日は傍観者ですけどなにか | 尾崎良仁 | |
少年は天地無用の恋をする | 冬子 | |
鳥葬をすれば容易くアルデンテ | toron* | |
佳 作 |
人が逝き探し出せない顔写真 | 田原勝弘 |
めくれてるだけで羽ばたくわけじゃない | 西沢葉火 | |
九点のリード守れぬ黙示録 | 海月漂 | |
終末はみんなアバラが折れている | toron* | |
コガネムシ超過積載疑われ | 徳重美恵子 | |
人 | 泡立ててリスクとらない微炭酸 | くに |
評:「炭酸じゃないです。”微”炭酸です」 | ||
地 | 淋しいと蛸が黄色くなっている | 芍薬 |
評:青くなる前に救いの手を。 | ||
天 | 偽札の女王陛下の目が燃えて | 秘まんぢ |
評:伝説級の悪女になれるか。 |
天の句、その技と心
偽札の女王陛下の目が燃えて 秘まんぢ
海外では女王が紙幣に描かれている国があるが、偽札の女王陛下である。一筋縄ではいかない、ずる賢さを感じる。「悪い女王」だとイメージの示す範囲が広くぼやけてしまうが、「偽札」に対し私たちが持つイメージを使って女王像が構築されている。
「目が燃える」を最近感じたのは金足農業の吉田投手。この夏、彼の目は確実に燃えていた。圧倒的な熱量だった。偽札の女王陛下が目を燃やして行うこと、何かただならぬ気配を感じる。私怨を晴らすのか、禁断の愛か。
川柳ではほとんどのケースで言い切った方が主張が強くなる。この句の場合「燃える」あるいは「女王陛下が目を燃やす」の方が川柳的には整う。しかし「燃えて」で終えることによって「続き」を感じさせる。「偽札の女王陛下」という伝記的、童話的表現のこの句の場合、言い切るより主張が強まったと判断した。
偽札、女王陛下といった意味の強さと、言外の悪さのイメージが共存し、お互いを高めあっている点を評価した。
没のポイント3(おやつリスペクト)
1 平凡な着想の平凡な表現
みんなが思うことをみんなが使う表現で示したような句は、もうすでに誰かがどこかで詠んでいます。
2 「頭痛が痛い」的表現
他の言葉で十分に想起できる言葉は省略し、別の主張を強める言葉を入れるべきです。
【例】雨降って傘をさしてる帰り道
上五はなくても、雨が降っていることは想像できます。
3 その他諸々
第123回発表しました。
のらいちご川柳やいちごつみ川柳で川柳に興味を持たれた方、ぜひご投句ください。
メニューの「web句会リンク」にネットで無料で参加可能なweb句会をまとめております。過去の結果などを参考に、自分に合うと思うものから投句してみてください。見るのと参加するのでは、違った楽しみがあります。お試しあれ。
平抜き句に消したと思っていた句が1句残っていましたので削除しました(8月23日12:20)。申し訳ございません。