59名113句 川合大祐選 | ||
平 抜 き 句 * 到 着 順 |
キャバ嬢の血清探すキスマーク | まさよし |
新宿の七夕 星の砂をまく | 犬井隆太 | |
「電話詐欺シナリオ急募」を鑑みる | 秘まんぢ | |
ストラディバリウスで神を殴りたい | 中村佐貴 | |
金紙はいちまい荒野に立たされる | よーこ | |
ラスボスもサンタも概念になった | 袴田朱夏 | |
聖少女うなじで脱皮繰り返す | 藤沢修司 | |
日陸川山谷草樹鳥虫死 | 斎藤秀雄 | |
眠りたくなさと眠気の卍紋 | 歯痛 | |
謎都市の謎スーパーの謎二階 | 歯痛 | |
ですので穴という穴に指入れる | 尾崎良仁 | |
毛皮着てあたしちぎれてピンクなの | 亀山朧 | |
嘘をつくときの小さな破裂音 | 芍薬 | |
頓服と正しく書ける三銃士 | 小俵鱚太 | |
jpegで朝夕思い出す鯨 | 多舵洋 | |
面接で毎年落ちる鍋奉行 | たにゆめ | |
死神の寝床へ三日月は沈む | 田村わごむ | |
自販機に常温の水探してる | 田村わごむ | |
「降ってるね」「夜だね」「明日、睡ろ うね」 | 杉倉葉 | |
制空権を失った日の喫茶店 | 杉倉葉 | |
松ぼっくりオーバーワークだったのだ | 森山文切 | |
システムが反作用してくる手帳 | 未補 | |
dボタン押す県境ずれてくる | いゆ蘭 | |
首のある魚になって泳ぐ駅 | 秋鹿町 | |
佳5 | 紛うことなきカニかまを噛み締める | 中村佐貴 |
佳4 | 何をチャラにしたいの担々麺の真っ赤 | 岩根彰子 |
佳3 | 先生が私の爪を食べた午後 | 甘酢あんかけ |
佳2 | 機械式愛の卑猥をあおい鱶 | 亀山朧 |
佳1 | 流されている献花 早足の犬 | いゆ蘭 |
人 | 有線で告げられた朝焼けの自死 | 秋鹿町 |
評:死は終わりでもはじまりでもないのかもしれない。ただ「そこに無い」「こと」の不気味さを有線で縛る。それは川柳を書くことと=ではないが、パラレルである。 | ||
地 | ナイアガラ カーテンの紐うしなった | 芍薬 |
評:瀑布は雪崩れおちる。何のために?空白を埋めるために。うしなった句、その構造自体の中に空白がある。幾度も問おう。何のために? に? に ? ? | ||
天 | 仏壇で気高い桃がとけてゆく | エノモトユミ |
評:今回、おそらく能記/所記のあやうさに最も切迫した句。「仏壇で気高い」のも「、とけてゆく」のも、最早モノではない。「桃が」私/世界を超えた天となる。 |
森山文切選 | ||
平 抜 き 句 * 到 着 順 |
「電話詐欺シナリオ急募」を鑑みる | 秘まんぢ |
全能の牛が持ち出す結果論 | 笹川諒 | |
うるおいのあるうち異国から異国 | 青砥たかこ | |
金紙はいちまい荒野に立たされる | よーこ | |
クレヨンの白が詐欺師のボスらしい | 福村まこと | |
ラスボスもサンタも概念になった | 袴田朱夏 | |
聖少女うなじで脱皮繰り返す | 藤沢修司 | |
バス停で鯨が来たという知らせ | 西沢葉火 | |
おまんじゅう全部一口だけ食べる | 真島芽 | |
捨て去った苗字は雪になりました | くみくみ | |
嘘つきを恵方側から黙らせる | 岩倉曰 | |
過去形にするとどんどん出る弱音 | 阿部千枝子 | |
謎都市の謎スーパーの謎二階 | 歯痛 | |
二件目ね火事のサイレン保湿しなきゃ | サトシワタナベ | |
電車とは交われない送電塔 | 平出奔 | |
頓服と正しく書ける三銃士 | 小俵鱚太 | |
既視感も想定内の清水寺 | 小俵鱚太 | |
何の略ポテトサラダじゃないのなら | たにゆめ | |
鍵付きのエレベーターが指す明日 | むぎのあわ | |
カマキリに廃刀令を説くオケラ | あまの太郎 | |
システムが反作用してくる手帳 | 未補 | |
dボタン押す県境ずれてくる | いゆ蘭 | |
首のある魚になって泳ぐ駅 | 秋鹿町 | |
有線で告げられた朝焼けの自死 | 秋鹿町 | |
佳5 | 面接で毎年落ちる鍋奉行 | たにゆめ |
佳4 | 故郷の鬼笑うアンテナショップ | はな |
佳3 | 何をチャラにしたいの担々麺の真っ赤 | 岩根彰子 |
佳2 | 父ちゃんのちんちんボクを眩しがる | 福村まこと |
佳1 | 鉛筆をかんざしにして平泳ぎ | エノモトユミ |
人 | 紛うことなきカニかまを噛み締める | 中村佐貴 |
評:カニかまであるプライド。カニよりカニかまが好きな人も世の中には結構いる、はずだ。 | ||
地 | 制空権を失った日の喫茶店 | 杉倉葉 |
評:カプチーノに浮かぶF-35 | ||
天 | みつけようどうぶつえんの密猟者 | 愁愁 |
評:ひらがなの怖さ。密猟者は震えている。 |
拝復★なるほど。たとえば文切さんがときどきされる二者択一のアンケート、あれってまさに「意味とイメージの範囲の確認」なわけですね。病院のエコーはたまた潜水艦のソナーよろしくの精査作業と、SNSならではの即効性を生かしたあなたの取り組みには、いつもおどろかされてしまいます。
さらに「作者の感性」までお考えだったとは流石・・・もうね、文切さんについてく!一生ついてく!オフ会には行きませんが(屁屁屁)w
コメントありがとうございました。
アンケート結果をまとめないといけないですね。結論から言うと、時期尚早という感じでした。もっと大々的にやらないとダメのようです。まあそのことが明確になっただけでもアンケートを実施した意味はありました。そのうちまとめますのでしばらくお待ちください。
こんばんは★わたしが思うに選評とは断定でなければならず、ゆえに選者はその理由を提示できなければならない。そうでない文章は選評を騙った感想文ですね。選者にとってはおのれの「目と手」を晒すことでもあり、お二人の「サービス残業」にはただただ頭が下がりました。
が、とくに今回は「手」テクニカルな部分におおく触れられていたことは勉強になりました。
「バス停で」の「で」とか、「夜だね」の欺瞞性とか、正直よく理解できず(・・・ふむむ。そういうものか)と飲みこむしかありませんが、
引き続きGAMBAりMAX!
コメントありがとうございます。
私は普段から言葉の示す意味とイメージの範囲であればどんな読みも正解と言っていますが、テクニカルな事項も同じです。
私が書いた「夜だね」に関して言えば、「夜だね」こそリアルであるという意見も正解であると思います。
議論の目的は2つあると考えています。一つは”意味とイメージの範囲の確認”で、これは議論によりある程度論理的に結論を出せます。もう一つは”自分の感性の確認”で、「あぁそうだ。その通りだ」「それはちょっと違うのでは?」という部分を積み重ねることにより、自分の感性を知ることです。自分の感性を知ることは、作句にも読みにも好影響があります。これは結論が出るようなことではなく、一人一人にそれぞれの正解があります。
本サイトでできる限り評を掲載しているのは、私や他の選者の考えに同調を求めているわけではなく、評をきっかけに考える機会を持っていただきたいからです。今後もそのような企画をどんどん実施していきたいと思います。
川合大祐さんから評をいただきました。ありがとうございます。
https://32mon.blogspot.com/2018/12/140web.html?m=1
私も大祐さん入選で私が没とした句を中心に理由を記載します。句に対してのものであり、作者や選者に対してのコメントではございませんのでご留意ください。二人とも没とした句については掲載について作者の同意があります。順不同です。
玄関を開けたら蝶の事故現場
最後の最後まで入選圏内に入れていましたが、既視感が拭いきれずに没としました。玄関を開けると何かある句や、何かを事故や事件に例えるのは割とある表現で、既視感を超えるインパクトが足りなかったです。
仏壇で気高い桃がとけてゆく
揚句の桃は気高いです。しかし「気高い」と明示したために却ってその気高さが損なわれたと思います。より正確に言えば、この桃は「気高い」が示す意味とイメージの範囲よりも気高い、はずです。「気高い」と示されたことによって読者の想像の範囲を限定してしまいました。
「降ってるね」「夜だね」「明日、睡ろ うね」
私はロマンチストではないので、このシチュエーションで「夜だね」と言われたら「みりゃわかるわ」と言ってしまうかも。この「夜だね」には”つくりごと”を感じてしまいました。四字空けならいただいたかもしれません。
ですので穴という穴に指入れる
指が入らない穴は、揚句では「穴という穴」の対象になりません。その理由は「ですので」の前に示されていそうですが、ヒントがなさすぎて感性が刺激されませんでした。
ジェネラルになり損ねるかジブリマン 文切
没となった自句を晒しておきます。評価は読者のみなさまにお任せします。
日陸川山谷草樹鳥虫死
よくあるとは言いませんが、どこかで見たことがある着想と思いました。この手の句の場合たとえば
陸日川谷山草樹虫鳥死
との句意の差を自分の中で消化できなければ私はいただけません。この並びでなければ表現できないことがあるなら、選者を超えた句です。
嘘をつくときの小さな破裂音
句と出典は思い出せないですが、嘘と破裂音の句は見たことがありほとんど同じ着想だったはずで手が出ませんでした。”完成されすぎている”ので、破裂音が具体的に示されたらどんな嘘かのイメージを促せたと感じています。
私は川柳には議論が必要だと思いますが、この手の議論は文字でやると硬くなりがちです。投句者、選者、読者がこのような議論ができるようにすることが本サイト開設以来の私の目標です。12月30日に第141回の入選句を対象にツイキャスで議論を実施します。いろいろ試しながら、目標の実現を目指します。そうは言っても古代ギリシャ柳人は試しすぎのような気もしていますが、古代ギリシャ川柳協会から怒られるまではやめる気はありません。今後も毎週web句会を何卒よろしくお願い致します。
共選につき
天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は休載です。