投句フォームと結果に戻る
56名106句 森山文切選 |
|
定年後タトゥーを入れた母の勝ち |
ペンギンおじさん |
スッポンがドリンク剤をイッキ飲み |
多舵洋 |
おとなりも六十二円オキナワモ |
武良銀茶 |
目標は薬が余らない努力 |
彦翁 |
闇さえも白一色へ雪の筆 |
八郎 |
前頭葉に在るグランドキャニオン |
まさよし |
寄付高で受かった人の高枕 |
井上雅代 |
終電の終点出るとユートピア |
八郎 |
今年また喜怒哀楽を待つ日記 |
田原勝弘 |
洗面器またはシャンプーまたは鶴 |
斎藤秀雄 |
敗北の砂の味する摩天楼 |
西泉アモ |
執着を愛と錯覚するすずめ |
多実果 |
リカちゃんの髪をバッサリ愛娘 |
阿部千枝子 |
ハイタッチより骨太なグータッチ |
ヨッシー |
闘争の果ての北上川下流 |
岩倉曰 |
インク沼に嵌る透明ペンマニア |
永見心咲 |
ブラウザ山を成し 煩悩の名残 |
みなみあきら |
通気性ゼロの世界で深呼吸 |
犬井隆太 |
仕方なく夜の帳になる烏 |
笹川諒 |
マジックミラー越しに数える母の皺 |
秋鹿町 |
まっとうに使われ汚れきるお札 |
青砥たかこ |
西側に箒を置いて客を待つ |
藤井智史 |
部屋干しの懺悔は生乾きのまま |
藤沢修司 |
わたしより深呼吸しているポカリ |
平出奔 |
佳5 |
バールのような狂ってゆく虎の尾 |
秘まんぢ |
佳4 |
真っ白なフラペチーノは嘘のあと |
袴田朱夏 |
佳3 |
怪物が苗字を吸ってすぐ吐いた |
たにゆめ |
佳2 |
マッチング率を気にする銀座線 |
いゆ蘭 |
佳1 |
黒船は来るし羊羹みたいだし |
西沢葉火 |
人 |
後続の来るまで踊る模範生 |
福村まこと |
評:模範生として生きるのも辛い。 |
地 |
ガードレールを外れて生きる三輪車 |
若枝あらう |
評:三輪車が先かガードレールを外れたのが先か。 |
天 |
被災地の天皇陛下着ぶくれる |
菊池洋勝 |
評:目を背けられなかった。 |
ネットでの川柳活動を応援するwebサイト
【定期】掲載順
1句目、2句目はユーモア、時事吟など比較的インパクトがあると判断した句で、平抜き上位と同じくらいの評価
3句目が入選句の中では一番下と評価した句で、3句目以降は下に行くほど順に良いと判断した句です。
天の句、その技と心
被災地の天皇陛下着ぶくれる 菊池洋勝
選をしていると、最初はそれほど高い評価ではなかったのに見直すたびにどんどん評価が上がっていく句がある。この句が正にそうだった。
入選にすることは見た瞬間決めたが、「天皇陛下」に対して「着ぶくれる」はポジティブな表現ではないし、「着ぶくれる」は俳句では比較的ある表現のようで選者としては上位ではいただきにくい気がした。
川柳は人情の機微の表現といわれている。感情は“ここまでが嬉しい、ここからは悲しい”というようにはっきり区別できるようなものではなく、様々な感情が入り混じって“今の気持ち”となる。
被災地を訪問されている天皇陛下の着ぶくれ。”お寒いのにありがたいと思う”か、”ご無理なさらず”か、”昔より小さくなられた”なのか、高齢の天皇陛下がこれまで背負われてきた責任を感じたか、あるいは天皇陛下と被災地の距離を感じたのか。
私の中に生じた何ともいえない感情を、“いただきにくい”で処理してもいいものか。何度も自問した結果の、天の句である。
没のポイント3(おやつリスペクト)
1 動く句(再掲)
他の言葉でも成立し、その言葉でなければ示せない主張がない句はボツです。特に固有名詞は動きやすいので、その固有名詞でなければ示せない主張なのかよく確認してください。
2 既視感に負けている
「どこかで見たことあるなぁ」を超える主張がない句は、ボツです。主張を広げて一般化すると既視感に負けやすくなるので、できるだけ具体的な表現にしましょう。
3 その他諸々
ファルケンボーツ