60名118句 森山文切選 | ||
じいちゃんの真似はダメよと隠す本 | 遊楽 | |
内臓に効くテトラポッドのポーズ | 岩倉曰 | |
核のゴミまだ使えるゾ未知の熱 | 柊無扇 | |
こむぎこ、と言えば涙はパンになる | 朝野陽々 | |
心地良い春風に乗るブーメラン | 彦翁 | |
ハンガーに吊るす無遅刻無欠席 | 藤井智史 | |
キャンドルが似合う人ばかりの会議 | 笹川諒 | |
薔薇だけが咲いては枯れる停留所 | 涅槃girl | |
やましさに蛍光ペンが加担した | 近江瞬 | |
おもいでに並走されている未来 | 宮下倖 | |
婆ちゃんが縁側で聴くデスメタル | ペンギンおじさん | |
新しい方から順に消える影 | あまの太郎 | |
暖冬のあおり心がヨーグルト | 青砥たかこ | |
直線はつらいと蛇行して歩く | 小林祥司 | |
人生の出口が動くあみだくじ | 武良銀茶 | |
湯麺の矜持に引っ張り出された | 尾崎良仁 | |
色刷りの魚拓で覆う壁の穴 | 福村まこと | |
もどかしく春を待ってるカメレオン | 麦乃 | |
アイテムをひとつ残してドアが開く | 馬鈴 | |
業績と共に溶けてく雪だるま | 雪上牡丹餅 | |
木蓮を一枚脱がす春の指 | 斉尾くにこ | |
裏側の湿りで生きる模範囚 | l996 | |
はらこ飯ぼくと心中してほしい | 江西レイ | |
扇風機ト音記号に逆戻り | toron* | |
佳5 | 水筒にペットボトルの茶を詰める | 井上雅代 |
佳4 | トラウマを包む風呂上がりのタオル | 千 |
佳3 | 服を着てあるけば町はただの町 | 平出奔 |
佳2 | 銀行員のまま太陽に吠えてみる | 秘まんぢ |
佳1 | 税務署の裏で飼われるかたつむり | 小俵鱚太 |
人 | 残酷な素うどん煮える老夫婦 | 浅井誠章 |
評:素は、時に残酷。 | ||
地 | もう一度ら抜き言葉で叱ってよ | 夏鵜 |
評:「アンタ何やってんの!?ら抜きなんて考えれんわ!」 | ||
天 | 週刊誌捨てる検索された道 | いゆ蘭 |
評:ポイ捨てダメ。ゼッタイ。 |
【お知らせ】
仕事が諸事情で多忙となり、少なくとも今年の11月まではこの状況が続く見込みです。家庭、仕事、川柳とさまざまなことを抱えており、川柳の作業量を減らさざるをえなくなりました。
天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は少なくとも10月末まで休載します。申し訳ございませんが、ご了承いただきますようお願い致します。
天の句、その技と心
週刊誌捨てる検索された道 いゆ蘭
“○○してはいけない”ということは生きていく上で数多くあり、みな頭ではわかっている。が、”ちょっとくらいならいっか”、”他の人もしてるからいいよね”など自分に甘くなってしまうのが人間の性である。
週刊誌を捨てる行為もそのひとつかもしれない。電車やベンチにわざと置いていったり、道端のゴミがかたまっている場所にさりげなく捨てたり。心当たりがある人は少なくないはずだ。
頭ではよくないこととわかっているので、どこか後ろめたさはある。「週刊誌捨てる」に対して示された後ろめたさが「検索された道」だという。今自分が週刊誌を捨てようとしている道は、誰かに検索されたことがある道である。週刊誌を捨てられないようにとの意図で検索されたわけではないけれど、誰かの目が、この道にはついている。
自分がしようとしている”よくないこと”と”後ろめたさ”が具体的かつ絶妙な距離感で表現されている。
没のポイント3(おやつリスペクト)
1 説明句(再掲)
辞書に書いてあるような普遍的事実を述べただけの句は、ボツです。
2 重言的(再掲)
「頭痛が痛い」のような表現になっている句はボツです。名詞で動作や状態が含まれていたり(例:頭痛=頭が痛むこと)、動詞に主語が含まれていたり(例:いななく=馬が声高く鳴く)する言葉はたくさんあるので、投句前に注意深く確認してください。
3 その他諸々
春はあけぼつ