天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は少なくとも10月末まで休載です。
56名109句 森山文切選 入選32句 | ||
駆け巡る選挙カー逃げないカラス | まるち | |
フリーザがこだわり抜いた丁寧語 | 近江瞬 | |
壊されることを知らない貯金箱 | 青山祐己 | |
素うどんが流れる渋谷交差点 | 浅井誠章 | |
駅までがワンメーターの無人島 | たにゆめ | |
腹の空く一食分の朝寝かな | 菊池洋勝 | |
気の抜けたビールにテンポ狂い出す | 小林祥司 | |
エゴサーチする指 きみに触れる指 | 朝野陽々 | |
爺ちゃんが熊で婆ちゃんが狸で | 平井美智子 | |
フル装備して立ち向かう春の厄 | アゲハ | |
紫のくちびる吸って見えた空 | エノモトユミ | |
地球儀にいくつか嘘が書いてある | 羽根 | |
展示前学芸員の椅子沈む | 袴田朱夏 | |
換気扇からフェイクニュースが漏れる | 糸篠エリー | |
親切な地図だ紅茶の染みがある | 西沢葉火 | |
恍惚の膝を一枚漬けておく | 千 | |
フィクションを嫌う閻魔の誤字脱字 | 秘まんぢ | |
多夫婚の位牌に残る片笑くぼ | 福村まこと | |
ばかになる手前で嘘をソートする | 芍薬 | |
紙オムツ替える新元号を聞く | ヨッシー | |
無呼吸の駐車券認証装置 | 岩倉曰 | |
助動詞を拾ってビンゴしてしまう | 斎藤秀雄 | |
大げさに褒めたい布団乾燥機 | 小俵鱚太 | |
傷口に群がる揚羽黒揚羽 | toron* | |
佳5 | 談合にリズムを添えるジャズピアノ | 中村佐貴 |
佳4 | 崖に咲く花で作った通知票 | 甘酢あんかけ |
佳3 | 前奏で終わるひらめのラブソング | 斎藤秀雄 |
佳2 | 紳士からブンガブンガへ誘われる | 斉尾くにこ |
佳1 | レモンスカッシュを越えて春の肩紐 | 岩根彰子 |
人 | 開店のお知らせばかり載る雑誌 | 有村桔梗 |
事実を言い当てる系の句であるが、事実に気付いた「わたし」の気持ちが感じられる。 | ||
地 | ふらんすにあげたいふかふかの帽子 | 笹川諒 |
言葉の響きが心地よい。ロシア帽か。おそろしあ。 | ||
天 | 生命と思えば干からびたパスタ | 岩倉曰 |
もともとカラカラに乾いた「パスタ」に「生命」と「干からびた」を組み合わせたことで、乾く>潤う>干からびるというイメージの流れが生まれた。この流れは「生命」とリンクしており、言葉の選択の妙を感じさせる。 |