天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は少なくとも10月末まで休載です。
58名110句 森山文切選 入選33句 | ||
無調整豆乳とだけあるLINE | 鴨居 | |
泡立ちの良い石鹸は信じない | ヨッシー | |
緋の月のしたたるように胸の薔薇 | 忠 | |
退屈がアジの開きに伝播する | がね | |
にゅう麺で豆腐を縛るような嘘 | 袴田朱夏 | |
クーポンで日サロに通う吸血鬼 | 朧 | |
パワハラがUターンするかずら橋 | 木根川八郎 | |
ドーナツの穴から落ちていく評価 | 雪上牡丹餅 | |
下駄箱にアイスをしまう修行僧 | 青山祐己 | |
濡れすぎた靴で一蹴り水たまり | はんたろう | |
適齢期過ぎたタニシの独り言 | あまの太郎 | |
置き去りにされても走る白い靴 | 秋鹿町 | |
透明になって蛍を呼んでいる | 真島久美子 | |
私だけ記憶の中にナタデココ | 夏鵜 | |
当たりピノ集めて繋ぐオリオン座 | 尾崎飛鳥 | |
空っぽの枝豆である君の服 | 甘酢あんかけ | |
モスキート音が今日は聞こえる給料日 | アゲハ | |
ちょっとしたパーティー用に買うパセリ | 未補 | |
踊るのに飽きた黒子のコップ酒 | 彦翁 | |
恋すれば一対一の生魚 | 杏野カヨ | |
老い二人精彩を欠く冷蔵庫 | 村上佳津代 | |
実家から出たがっている袋とじ | 浅井誠章 | |
薄闇をかぶって白いオオカミと | 斉尾くにこ | |
力点が緩くて恋になってゆく | 真島久美子 | |
思春期のドア闇雲に静電気 | 糸篠エリー | |
佳5 | 前髪を切ってあなたに溺れまい | 水谷裕子 |
佳4 | 蝶々結びのどこまでを済ませたか | いゆ蘭 |
佳3 | ツーブロックに刈って恋せよハリネズミ | もーやん |
佳2 | デイケアの利用者揃う夏祓 | 菊池洋勝 |
佳1 | 煙突の錆が上書きするロマン | 西鎮 |
人 | 耳たぶを揉まれて昨日から猫背 | 斎藤秀雄 |
ゼッタイ昨日からじゃないヨネ。 | ||
地 | 三度目のお手で水かき消えた犬 | 芍薬 |
「犬」に成り下がったのか、望んでいた飼い主にようやく巡り合えたのか。「犬」のみぞ知る。 | ||
天 | ベッドサイド打ち上げられた耳光る | 秘まんぢ |
上五は「枕元」に置き換えられると思う人もおられるかもしれないが、「枕元」では耳は打ち上げられないし、光らない。「ベッドサイド」だから、打ち上げられ、光る。ベイサイドのホテル、ベッドからの夜景、妖しく光る「あなた」の耳、そんなドラマを感じさせる句である。 |