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44名85句 森山文基選 入選26句 |
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田舎にはアルファベットの犬がいる |
さこ |
アイドルになり損なったレジ袋 |
颯爽 |
失敗を繰り返しても大きい手 |
袴田朱夏 |
串刺しだけど片付け上手 |
朧 |
台風で積み木の家に寝る仔猫 |
秋田新屋 |
調理師の曲がり始めた指の骨 |
西沢葉火 |
胡桃割るカンフースター真似てみる |
北原有 |
明け方に感情移入する写真 |
ちゅんすけ |
不器用なフォークリフトの眠り方 |
ほのふわり |
猫バスにピンヒール履く女王様 |
稲井亮太 |
ストレスを感じて眠くなる桜 |
海月莉緒 |
白い息吐いてた頃の酉の市 |
ヨッシー |
目薬の蓋に人魚の毛を活ける |
未補 |
薔薇好きのクロワッサンよごゆるりと |
水谷裕子 |
高低差マニアの猫がいる床屋 |
ほのふわり |
弁が立つから通行人は座る |
斉尾くにこ |
カプセル化された聖書を処方する |
内山佑樹 |
長椅子にごめんと言って済みますか |
水城鉄茶 |
佳5 |
めんつゆの誤解を解いた油揚げ |
涅槃girl |
佳4 |
遅刻したパンダに聴かすバグパイプ |
沢江風 |
佳3 |
ビル街を包む無音の季語辞典 |
城水めぐみ |
佳2 |
青鷺が綿棒になる次のコマ |
抹茶金魚 |
佳1 |
ハロウィンの歯に蝶が挟まったまま |
南方日午 |
人 |
ニュートンのいないところで飛び降りる |
平安まだら |
地 |
哀しみの底に水泥棒が住む |
真島久美子 |
天 |
ヒロインは脱ぎましょうカニ食べましょう |
斉尾くにこ |
ネットでの川柳活動を応援するwebサイト
田舎にはアルファベットの犬がいる さこ
アイちゃんでしょうか、エルでしょうか、それともエスでしょうか?
アイドルになり損なったレジ袋 颯爽
レジ袋のプラスティック製品に占める割合は2%。これではせっかく削減しても、ストップ・ザ・温暖化の象徴にもなりません。
失敗を繰り返しても大きい手 袴田朱夏
苦労人の手には信頼感があります。
猫バスにピンヒール履く女王様 稲井亮太
トトロの猫バスでしょうか。女王様はどんな人なのでしょう。
ストレスを感じて眠くなる桜 海月莉緒
折角春を謳歌しているのに、酒臭い猿どもの嬌声にうんざり。
白い息吐いてた頃の酉の市 ヨッシー
コロナのせいでいろんな市やお祭りが自粛されました。第三波で冬も厳しそうです。市がなくなってしまっては、息も吐けません。
高低差マニアの猫がいる床屋 ほのふわり
とびおりるのが好きなのでしょう。でも床屋のどこから? 想像が膨らみます。
弁が立つから通行人は座る 斉尾くにこ
立つと座るの対句が目を引きます。なかなかにトークの上手い人なのでしょう。会場でもなんでもないところで、通行人が立ちどまってその人の話を聞くために、座り込むなんて。現実にはあまり見かけませんが、景として受けとめました。
ヒロインは脱ぎましょうカニ食べましょう 斉尾くにこ
カニは「鎧」が分厚くて食べにくいのですが、食べれば美味しいものです。ドラマのヒロインも、ガードが堅いのですが、脱いで、脱いで、という期待が、頭の中だけですけれどもあることは否定できません。特に酔っているときは。男の性です。
カプセル化された聖書を処方する 内山佑樹
教会でよくある風景かもしれません。評者はクリスチャンではありませんが、新約聖書、ことに福音書は好きでよく読みます。神父や牧師に処方してもらおうとは思いません。彼らは医者ではないのですし、自分の問題は自分で治せばよいのです。
長椅子にごめんと言って済みますか 水城鉄茶
お尻を押し付けてすみません。寝そべってすみません。ポテチをこぼしてすみません。テレビを見るとき、興奮して体を揺らしてすみません。済みませんけど、勘弁してください。反省はしません。
ビル街を包む無音の季語辞典 城水めぐみ
無言でも無声でもなく無音。黙って包んでいるのでしょう。そもそも季語とは自然現象や人々の暮らしをネタにして季節感を暗示させるレトリックですが、病院や刑務所、ビル街は無機質で、あまり季節感がありません。お前も季節感を持て、と迫られているのでしょうか。別の解釈もできそうですが、とりあえず。
ニュートンのいないところで飛び降りる 平安まだら
ニュートンと言えば万有引力。重力の支配の及ばないところで、とびおりてみた、という景が真っ先に思い浮かびました。宇宙ステーションでしょうか。
哀しみの底に水泥棒が住む 真島久美子
「悲」と「哀」を比べると、「哀」の方が「あわれ」と読むだけあって、言葉の運用的に客観に傾くようです。たとえば「わたしは悲しい」と言いますが、「哀」は観察の対象に対して使うもので、自分を対象に「私は哀しい」と言えば自己陶酔的、ナルシスティックに聞こえます。ところで、かなしいと言えば涙。泣いて泣いて水を奪おうとする「私の哀しみ」は、それ自体が人間から水分を奪う水泥棒のようなもの。「私の哀しみ」に溺れる、泣くことに溺れるとこのようになります。作中主体は冷静だと思いました。
次回第241回から、入選数が投句数の2割以上3割以下となります。