47名90句 森山文基選 入選20句 | ||
軒先に青薔薇飾るラーメン屋 | 涅槃girl | |
干し草のベッドではしゃぐ出会い系 | まつもともとこ | |
流行の色を知ってる裁ち鋏 | 松澤秀幸 | |
ネットからガラスの顎を狙われる | 颯爽 | |
鉤括弧付けずに喧嘩する度胸 | てつろう | |
虹色の馬のグレーのかたち 見ろ | 斎藤秀雄 | |
水面へ未完の雪が呼ぶ金魚 | 抹茶金魚 | |
トーストに虎の黄色い部分だけ | 西沢葉火 | |
鞄から取り出すドラえもんの皮 | 史っ | |
大腿骨は薔薇の苗床 | 千仗千紘 | |
三日間同じ景色が続くバス | 麦乃 | |
教科書を見ない若さの使い道 | 袴田朱夏 | |
佳5 | 老僧の指甘くして消えていく | 浅井誠章 |
佳4 | 擬人化を赤字路線のバスが待つ | 袴田朱夏 |
佳3 | 神様の前屈がまだ終わらない | ペンギンおじさん |
佳2 | 黒猫がマークシートになるあくび | 南方日午 |
佳1 | 関節を回すと光るクリスマス | 水鳥 |
人 | ひまわりが頭を垂れるポチ袋 | 永峰半奈 |
地 | 幸せなふりをしているブラホック | ちゅんすけ |
天 | 晴れ女だっけそんなに涙して | 尾崎良仁 |
軒先に青薔薇飾るラーメン屋 涅槃girl
青い薔薇と言えば、もう手放してしまいましたが、清原なつのの漫画「アレックス・タイムトラベル」を思い出します。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アレックス・タイムトラベル_(漫画)
ネットからガラスの顎を狙われる 颯爽
たとえば木村花さんもそうだったのではないでしょうか。
虹色の馬のグレーのかたち 見ろ 斎藤秀雄
スペース空けのあとの「見ろ」は注意喚起でしょう。LOOK!みたいな。虹色の馬はその美しさに目を奪われますが、果たして本当かなと。怪しいのではないかなと。だから「グレー」なのではないかと。
みんな騙されているのではないかと。
トーストに虎の黄色い部分だけ 西沢葉火
「ちびくろサンボ」では、虎はギー(バター)になってしまいましたが、黒い部分は要らないと。黄色いところだけで十分だ、と主張しているようで面白いと思いました。
鞄から取り出すドラえもんの皮 史っ
最初ぎょっとしましたが、よく考えたら着ぐるみですね。ホラー路線も捨てがたく思いますが。
大腿骨は薔薇の苗床 千仗千紘
大腿骨を苗床と考えた時、その上にあるのは骨盤、子宮、妊娠、薔薇のような頬っぺの赤ちゃん誕生、とこれは飛躍が過ぎたでしょうか。
三日間同じ景色が続くバス 麦乃
毎日同じ路線を走っているのなら、三日間に限定する必要はないでしょう。わざわざこのように書くということは、作中主体は「旅の途中」なのだ、と考えられます。さらに言えば、「バス」そのものが閉鎖されたとある空間の喩えかもしれません。
教科書を見ない若さの使い道 袴田朱夏
与えられた教科書の内容を疑う姿勢は大切だと思います。無鉄砲なように見えますが、評者はむしろエネルギーを感じました。
老僧の指甘くして消えていく 浅井誠章
老僧を誘惑するファム・ファタールを思い浮かべました。もっとも小僧さんに内緒で食べた牡丹餅かもしれませんが。
擬人化を赤字路線のバスが待つ 袴田朱夏
赤字路線は乗客もまばら。地方で利用するのは車を運転できない交通弱者。運転免許を持って一人前だとすれば、停留所でバスを待つ面々は人間もどき、つまり擬人化された存在でしょう。寂しい風景です。
ひまわりが頭を垂れるポチ袋 永峰半奈
そういう絵柄なのかもしれませんが、時季的にポチ袋はお年玉袋でしょう。ひまわりはもうすでにお盆が終わる時点で、お正月の方向に頭を下げていたのかもしれません。半年後はあなたの出番ですね、そのあとはまた私ですね、よろしくお願いしますと。あるいは「こうべを垂れる」なので、敗北宣言でしょうか。
晴れ女だっけそんなに涙して 尾崎良仁
雨女じゃなかったっけ、と暗に言っているのでしょうか。言われる本人にとっては不名誉なコードネームですから、汚名を晴らしたかったのかもしれません。晴れて嬉し涙を流している女性を想像しました。
全評したいほどでしたが、やはり選評にしました。喜んでくださる方がいらっしゃるのはうれしいのですが、こんな評に囚われずに観賞する姿勢も大事です。それでは。
忠さん、いつも鋭い選評をありがとうございます。
まるで良質の評論を読むようです。その多彩な能力は評論の面でもかなり生かされるのではないでしょうか。
私など何も脳みそに入ってないニンゲンはただただリスペクトするのみです。
ワタクシの句にもコメントをありがとうございます。
この句は友人がアメリカをバスで旅した時の実景を書きました。「あ、砂漠だ!」と景色が変わったと思ったら三日間砂漠。「あ、草原!」と思ったら三日間草原。若いからできた旅なのだと思いますが。
それから余談ですが、「ネットからガラスの顎を狙われる」のコメントに書かれている木村花さん。昔同じペンネームを使ったことがあって一瞬ドキッとしました。卑怯なSNS、あまり見てほしくないですね。
すみません。追加です。
忠さんは、「増殖する俳句歳時記」というホームページをご存じですか。清水哲男さんが毎日俳句を掲示してそのコメントを書いていらっしゃるのですが、かなり面白いです。今はもう終了していますが、ときどきのぞく愛読書と言っていいかもしれません。良かったら一度のぞいてみてくださいね。
麦乃様
「増殖する俳句歳時記」ありがとうございます。いつでも見られるように、早速「お気に入り」に入れました。