対談:川柳とインターネット6

「川柳とインターネット」というテーマで、なかはられいこさんにお話を伺いました。

日付:令和元年9月7日
場所:地鶏×個室居酒屋 八満 名駅店

なかはられいこ
ねじまき句会
森山文切
毎週web句会代表

1 川柳を始めたきっかけ

本日はなかはられいこさんに「川柳とインターネット」というテーマでお話を伺います。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
まず川柳を始めたきっかけをお伺いしたいのですが、れいこさんの句集『脱衣場のアリス』のプロフィールによると時実新子さんがごきっかけですか。
そうですね。『有夫恋』です。
『有夫恋』はご自分で買われたんですか?どなたかにもらったとか?
もらいました。誕生日プレゼントで当時の親友から。その子は私が本好きで書くのが好きなのを知っていたので。
書くのが好きというのは、小説とかですか?
詩を書いていました。高校時代はフォークソング部で歌詞を書いたりとか。
では作詞が創作活動の最初ということですか?
うーん、最初の最初は小学生の頃かな。ノートに小説もどきを書いてました。親しい友達で回し読みみたいな。でもことごとく途中で終わって、エンディングがわからない(笑)
オール次回作にご期待状態ですね(笑)
俳句や短歌は昔から好きで読んでいて、俳句は富澤赤黄男さん、西東三鬼さんの作品に憧れてた。短歌は塚本邦雄さん。でも俳句や短歌は自分で書こうとは思わなかったのよね。
では俳句や短歌は読むだけだったんですね。
そう、純粋な読者だった。でも『有夫恋』を読んだ時、なぜか「あっ、できそう」って思ったんですよ。
その「あっ、できそう」のあとはどういった経緯で川柳を?
すごく不思議な出来事があって。『有夫恋』をくれた子が岐阜に嫁いでいたところが競輪新聞を発行している会社だったの。で、『有夫恋』を読んで感想代わりに作った句を誰かに読んでほしくって、その子にFAXで送ってたんです。
で、偶然なんですけど、金森冬起夫*さんっていう岐阜の作家さんがその新聞社に勤めていて、たまたま私の句を見たみたい。そしたら金森さんが「会わせたい人がいるからその友達呼んで」ってその子に言ったの。それで金森さんと一緒に、草刈蒼之助**さんに会いに行くことになったんです。
*金森冬起夫:岐阜の革新的な川柳作家今井鴨平のもと活動していた。
**草刈蒼之助:金森と同じく今井鴨平のもとで活動。川柳展望を立ち上げた頃の時実新子とも交流があった。
その時蒼之助さんから「あんた川柳やらなあかん」って言われて、紹介されたのが『緑』と飯尾麻佐子さんの『魚』で雑誌ももらった。そしたらちょうど『緑』で誌上大会の告知があって、じゃあ出してみようって。で一席になっちゃったの。
すごいですね・・・
『魚』にも出したら飯尾麻佐子さんから「特集組むから何句か出して」って言われて、その時同時に載ったのが倉本朝世さん。その頃はまだ知らなかったんだけど。とにかく偶然がすごく続いて、川柳やれってことなのかなって30年もやっちゃった(笑)
その頃の句ってあります?お友達にFAXした句とか。
さすがに残ってないなぁ。

2 ラエティティア

その後はどういったご活動を?
新子さんが選をされていたアサヒグラフにも投句してました。そこでも朝世さんとよく一緒になったなぁ。アサヒグラフは短歌の枡野浩一さんも投句してた。あとはラエティティア!短歌の人たちとチャットやってた。最初の頃は川柳は私だけだったかな。
これですね。
(事前に調べていたラエティティアのサイトを見せる)
これこれ、まだ残ってたんだ!毎晩チャットで盛り上がってたなぁ。懐かしい!
参加者の顔ぶれが凄まじいですね。
でしょう?もうジャンル越えてワイワイガヤガヤと。メーリングリスト上で俳句短歌川柳連句いろんな句会をやってたんです。楽しかったよ〜
川柳はれいこさんだけですか?
最初はそうだったかな。でも後から石部明さんとか樋口由紀子さんとかいろんな人が増えた。
本当にすごいメンバーですが、なぜ終わってしまったのでしょう?
みんな忙しくなったし、もう時代がメーリングリストではなくなったのかな。みんなブログをやり始めて、自然になくなった感じ。

3 μ

れいこさんとインターネットの関わりはラエティティアが最初でしょうか?
えっとね、自分のホームページが先。μ(みゅー)***というサイトです。
***現在は閲覧できない
μではどのような活動をされていましたか?
自分の作品を発表してた。メインは掲示板。掲示板の管理人は荻原裕幸さんで、正岡豊さんとかいろんな人が来てくれた。メーリングリストの次が掲示板全盛期だったな。
μを始められたきっかけは?
単純にインターネットってやつをやってみたかった(笑)
Windowsが爆発的に売れた頃だからね。
当時は今のように比較的簡単にホームページを作れるようなシステムはなかったと思うのですが、ご自分でコードを書かれていたんですか?
もちろん自分で。まあ書いてたっていうかいろんなところからコピペで寄せ集めた感じだけど。
コピペとはいえコードの意味なんかはわからないとダメですよね。
そうですね。だいたいわかります。
それはすごい!
もー大変だった。あの頃は接続自体がすごい大変だったしねー
そうでした!ダイヤルアップ回線でしたもんね。
そうそう!うっかりするとすんごいお金かかるの(笑)
夜何時から何時までつなぎ放題みたいなのありましたね!それを考えると今は天国のような環境です。
なつかしい〜
自分が調べた感じだとネット句会はCOCON****が最初かと思うのですが、COCONにも参加されていたのですか?
****高橋繭子が立ち上げた川柳のwebサイトで、ネット句会は1997年頃開始。現在は閲覧できない
おっしゃる通りCOCONが一番古いと思います。私も参加してました。
μでも句会をされてました?
してなかったですね。純粋に作品を発表する場。あとは掲示板での議論です。

4 WE ARE!

その後『WE ARE!』が発刊されるわけですが、発刊の経緯をお教えください。
ずっとネットで作品を発表していたので、紙媒体で発表してみたいと思ったのがきっかけですね。当時私は川柳展望に所属していたんだけど、それとは別の形でやってみたいという思いもあって。
WE ARE!』の立ち上げは倉富洋子さんとですよね。
そう。私事務能力全くないので(笑)、一人じゃなぁと思っていて。当時クラトミはラエティティアに参加していて、川柳大学に所属してた。「二人で何か始めたらみんなびっくりじゃない?」って話になってじゃあ二人でやるかと。
WE ARE!』は冊子だけではなくてwebサイトもありますが、これは最初から両方やろうと?
そうですね。webサイトのデザインは荻原さんがやってくれました。
では『WE ARE!』のwebサイトに関してはご自分でコード書かれたりは・・・
してないです。
WE ARE!』は2001年から2002年までですが、当時の反応はどうでしたか?まだインターネットがそれほど普及していない時期だったと思うのですが。
川柳ではほとんど誰もインターネットのことをわかってなかったです。冊子は買ってくださる方は多かった。従来の川柳に飽き足らないという人に話題になればいいなぁと。川柳って、俳句や短歌の人は当時知らなかったから・・・今でもそうか(苦笑)
今でもそうですね(苦笑)
そういう人たちに向かって川柳ってこういうもんだよって言いたいってのもあった。
反響はいかがでしたか?
短歌の人に多かったかな。
それは荻原さんの影響でしょうか?
うーん、というよりはラエティティアのメーリングリスト句会の参加者の中で川柳ってわからないけど面白いねっていうのがもともとあって、それが下地になっているかな。『WE ARE!』には俳句や短歌からいろんな人に参加してもらったけど、必ず川柳を書いてもらっていました。

5 ねじまき句会と個人ブログ

次はねじまき句会のお話を聞かせてください。ねじまき句会のブログは2011年が最初の記事で、その時すでに75回めの句会ですね。れいこさんは個人ブログもされていますが、ねじまき句会と個人ブログはどちらが先ですか?
ねじまき句会の方が先です。ねじまきの前に「あるまだ句会」というのがあって。三宅やよいさん、原しょう子さん、荻原さん、丸山進さん、私でやってて。ジャンル越えて575の句会をやろうと。ゲスト呼ぶんだけど、私とやよいさんが口が悪いので、ゲストがベコベコになって帰っていくという(笑)
(笑)
あるまだからねじまきに移行したのが2004年*****。ねじまきは最初5人くらいだったんだけど、今は15人超えることもあります。
*****第1回ねじまき句会は2004年3月9日。ねじまき句会のこちらの記事参照
ねじまきは議論中心ですよね。先日の逆選******は面白かったです。
******一番ダメな句を選んでその理由を議論する。
あれは面白かった。
信頼感がないとできないですよね。基本的には川柳の評って褒めることが多いので。
人格の否定と作品の否定は違うんだけど、なかなか難しいのよね。
何度か議論の句会に参加したことがあるんですけど、否定的な意見にはどうしても感情的になってしまう方はおられますよね。その度に「作者じゃなくて作品についてですよ」って言うんですけど。
本当に難しい。私もあるまだ句会の時あまりにもゲストの方が残らないので、どういうことなんだろうってやよいさんと反省した。没の理由を言う方が簡単で、どこがよかったかをきちんと言えるようになるのは時間がかかるんですよね、やっぱり。「なんとなく好き」とかになりがち。
「なんとなく」はよくないですよね。私は毎週選をしていますが、入選でも没でも理由をきちんと説明できるようにと常に心がけてます。
私が新人の頃不満だったのは、なんで自分の句が没なのかわからないこと。当時は「選者に没の理由を聞くほど野暮なことはない」と言われていて、「そんなの自分で考えろ」って。でも自分で考えて良いと思って出したのにどうすりゃいいのよって。
私が川柳を始めた頃は「選者は聞かれたら没の理由を言わなきゃいけない」ってことにはなってました。実際はなかなか聞けないですけどね。
当時俳句の句会に参加したときにね、ダメな理由の議論もあってこういうのいいなと。ラエティティアも短歌の若い人が出した歌集の批評会なんかも盛んだった。「初めての歌集でこんなに言われてこの後どうするんだ」みたいにボロクソに言われてる人もいたけど、すごい熱だった。そういうのが川柳でもできればなぁと思って、あるまだでもねじまきでもやってきたんだけどね。
個人ブログ開設のきっかけはなんですか?
うーん、あんまりネットに出てこないとみんなが心配するから(笑)
生存報告ですか(笑)
それもあるけど、句を作ってないと死んじゃう病なの。川柳に対して何か言っていないと死んじゃう病
わかる気がします。私も今は投句は全くしてないですが、句はずっと作っています。ではブログはそういう「言いたいことを言う場所」としてですね。
みなさんいろいろ送ってくださるじゃないですか、句集とか。コメントしないとなーと思うわけですよ。応援したいのもあるし。穂村弘さんに「誰かが全力で褒めた歌は生き残るんだよ」って言われたことがあって、それがずっと頭に残っている。だから私も応援したい人を全力で褒めたいなと。

6 インターネットに望むこと

最後に、黎明期からインターネットに関わられたお立場としてインターネットに望むことをお教えください。
ネット会議みたいな句会をしてみたい。例えば大阪と名古屋と東京とでその人たちの行きやすい場所で集まっての句会とか。
技術上はすぐにでもできそうですね。ライブ川柳句会で使用しているツイキャスは8人まで配信に参加できるので、自宅ででも可能と思います。
面白そう!
今は誰でも気軽に配信できます。短歌ではネットだけで活動している方の配信も多いようです。知っている人同士で集まってというこぢんまりとしたグループが多いように思いますが、そのような小さなコミュニティは川柳でも少しずつですが生まれつつあります。
小さなコミュニティとなると個々で別れちゃって、知らない人は入りづらい感じなのかな?
そういう傾向は感じます。配信はだいたい自由に聴けるのですが、知らないとアクセス自体ができないですからね。小さなコミュニティは議論しやすいですし良いと思うのですが、コミュニティ同士でぎゅっとまとまって動くようなイベントやサイトができればなと思っています。
ただやはり私達の世代にはそういう技術がある人がなかなかいないので、技術のある人が各地にいて、そこに集まればネットができない人でも全国の人と繋がれるみたいなイベントをしてほしいな。長いことネットで川柳に関わってきて、できる人とできない人の距離はずっと感じてきたので。
面白そうですね。確かに今はできる人同士でやっている感じはあります。
できる人の中にできない人も参加できるような仕組みがあるといいな。
今後配信は技術的にもっと簡単になるはずなので、参加できる人が増えてくると思います。
あとは、ネットで川柳の朗読をしてみたい!
朗読、ですか。披講ではなくて?
そう、朗読!披講じゃなくて。2001年にマラソンリーディングというのをラエティティア中心となってやったんです。短歌の朗読をする人、川柳は私とクラトミ。で朗読熱がわっと高まってあちこちで朗読をしたんだけど。
そうなんですね!聴いてみたいです。
川柳はね、朗読に向くんですよ。短いから音だけですっと入ってくる。披講になると選者の癖が入ってくるけど、朗読だと句ができたまま聞いてもらえるというか。
朗読はすぐにでもできそうですね。録音して公開すればいいので。
森山さんも自分でやってみたらいいですよ。朗読を意識すると難しい言葉や記号は使わなくなる。難しい言葉や記号が悪いというわけではないんだけど、残る句というのは耳で聞いてわかる句だと思う。
web句会だと文字だけになりやすいので、今後は耳でも感じられる企画もできればと思います。本日はありがとうございました。
ありがとうございました!

まとめ

インターネットが普及し始めた頃からネット上で川柳の活動をされてきたなかはられいこさんにお話を伺うことができ、川柳のwebサイト管理者として大変勉強になりました。今後の企画に活かしたいと思います。

インタビューの後、2次会で念願だったコメダの小倉トーストを食べながられいこさんといちごつみ川柳をしましたのでリンクします。

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)