評の比較:50万アクセス句会

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50万アクセス記念で入選、没が割れた全43句について、選者3名の評を掲載します。当初は選者が議論を行うことを考えていましたが、議論を進める中で、選者の議論を公開するより投句者自身で評を比較し、投句者自身で考えていただいた方が良いとの判断に至りました。評は作者が誰かわからない状態のものです。作者名はここには示しませんので、結果のページでご確認ください。評においては批判的な部分もありますが、句に対してのものであり作者を批判する意図はございません。

掲載、評について
・最初の番号は単なる通し番号で意味はありません。
・掲載順は2名入選句の後1名入選句です。久美子与生入選からで、以下、久美子文切>与生文切>久美子>与生>文切の順です。同じカテゴリ内での順番は投句順です。
・句の後に()で入選にした選者と入選順位を示します。
例:(久9, 与18)は久美子9位入選、与生18位入選、文切没
・与生さんの句は自身以外の選者が2名とも入選としたので評は掲載しません。
・「入選句は褒める」「没句はダメ出し」が評の基本方針です。下位入選の句にはダメ出し要素がある場合もあります。

選者

真島久美子
卑弥呼の里川柳会会長
月波与生
おかじょうき川柳社所属
森山文切
毎週web句会管理人
1   差音なら帰ったワヲンならいるよ(久9, 与18)
聞いたことがある言葉程度の認識だったので、調べてみた。波形の合成の云々…分かったような、分からないようなまま、またこの句と向き合ってみた。意味よりも、表現を見てほしいだけじゃないかと思い、それなら相当面白いなと思った。「差音」があるから「ワヲン」が理解できるが、わざわざカタカナにした意図が見えない。とにかく「いるよ」という表現が可愛い。
差音がいい。川柳でははじめて見た言葉。が、ワヲン(和音?)が言い過ぎに感じた。言葉の韻よりも差音の特性を川柳として表現した方がよかったのでは。
ワヲン=WAONで、異音(イオン)が頭から離れなかった。
2 致死量の「ん」を野晒しする白夜(久11, 与12)
「ん」を使った句は始めて見た。致死量の「ん」だから、一音じゃなくて二音かもしれない。「んー」みたいな。「野晒し」と「白夜」が怖い絵本を見ているようでドキッとしたが「致死量」が全てではないのか。
「ん」を使った川柳は少なくないが致死量の「ん」は初めてで面白い。白夜という言葉で平凡になった。致死量、野晒し、百夜、と刺激の強い言葉が3つもあって、句としてうるさい印象を受けた。
「野晒しに」でいいのではないかということは気になった。「野晒し」は「される」の表現の方が合うのではと感じた。致死量の「ん」は白夜によって野晒しにされるか、「わたし」が意志を持って世に晒すイメージが強くて、使われている言葉と主張が自分の中でマッチしなかった。
3 レジ下に転がる五円達者でな(久20, 与13)
なんだこの男らしい言葉!作者は侍とみた。転がったのが500円玉なら、この侍はどう動くのだろうか。
つり銭を落とすと自販機の下といいギリ手が届かないところに転がることが多い。達者でな、もう届かないつり銭に対するが口惜しい気持ちも表していて面白い。
ご縁がなかったということ以外に広がりを感じなかった。
4 G線上何はなくとも笹団子(久14, 与21)
アリアしか思い浮かばなかった。だけど私が聞いているのは「アリア」で、G線上じゃないかもしれない。まぁそんなこと考えるよりも、目の前の笹団子の方が大事。この気持ちに非常に共感する。
G線上はアリアしか思い浮かばないが、取り合わせとしての具象が笹団子でよかったかどうか。深刻な悩みを川柳に変換できたということで笹団子でよかったと思う。
最近G線の句をよく見るような気がするが流行なんだろうか?G線と笹団子の関係性がつかめず、上五はなんでもありな気がした。
5 どうしようもなくてくしゃみする銀河(久2, 文12)
最近気付いたのだが、私はどうも銀河系に弱いみたい。まあそれは置いといて、この前半のひらがなの流れが日々の平凡なワンシーンを上手く表現している。「どうしようもなくてくしゃみ」これだけでも良いじゃんと思うのに、そこが銀河だと言われたら、平凡なワンシーンも一瞬で煌めいてくる。まぁ、くしゃみだけどね。
銀河といい白夜といい、下五に広がりのある言葉を置くと、イメージが拡散して締まらないように感じるのは自分だけだろうか。「どうしようもなくて銀河からくしゃみ」だと締まる。また、銀河という言葉に頼りすぎている。刺激の強い言葉はその言葉を使うだけでいい句ができたように錯覚するので書き手は要注意だろう。
銀河の大きさと「どうしようもなくてくしゃみをする」ことの小ささの対比が効いている。
6 アルビノの鬼にほんのり朱鷺の色(久13, 文8)
鬼を詠むときは、常に自分。まさかの「アルビノ」に驚いた。からの「朱鷺」で重々しい雰囲気になったが、その雰囲気がこの句の醍醐味だと思う。ほんのりが気になるが色を詠んでいるのにカラフルではないというところも魅力。
アルビノの鬼はよかったが、アルビノも朱鷺も色を表しているように読んだので、色で始まり色で終わる句に広がりを感じなかった。
意味もイメージも強い朱鷺色によって、アルビノの鬼に希望が与えられていると思う。
7 恋すると出るミント系のおしっこ(久12, 文13)
恋をすると、体内がミント系になる。体内がミント系なのだから、ミント系のおしっこが出るのは至極当然。「おしっこ」の句を入選にしたのは初めて。爽やかだからいーのだ。
酒を飲みすぎると糖が出ます。と何が違うのか。恋、ミントと言葉はきれいだが、原因=結果の説明と読んだ。
おしっこは不要物を体外に排出する。従って、「わたし」の恋にはミント系は不要である。ドロドロした恋かもね。
8 新月の重さささえる街灯り(久5, 文16)
新月でなければ句の中の街灯りは生きてくれない。最近、月がとても綺麗ですごく惹かれた。新月の重さは、それぞれが抱える想いの重さ。どこを探しても見当たらない月が答えのようだ。
新月が動くか動かないかで句の評価は分かれるだろう。自分は動くと読んで取れない。月は使いやすい具象で自分もよく使うが、イコール過去の佳句も多いので、他の句よりの選のハードルは高くなってしまう。
目には見えにくい新月の重さに着目した点と、街灯りの対比が効いた。ただありそうとも思ったし、「街灯」にできたんじゃないかとかいろいろと考えた。技術的には「さささ」の影響が大きそう。
9 自画像と乖離してゆく肖像画(久1, 文17)
自分と他人の空間を表現するには「乖離」が適している。「乖離」だったから一席にとった。こうありたい自分と、そうじゃない自分の迷いが混在しているのに、どっしりとした安定感がある。乖離によって、前と後ろ、裏と表まで考えさせられた。
乖離、とか難しい言葉を使わなくてもこのイメージを表現できるのではないか。自己評価と他人からの評価の落差の嘆きを書いたと読んだが、そうだとすれば「乖離」は川柳で使うには重い言葉。よい例えではないが「自分ではオスカル他人からはラスカル」でも句意は伝わる。
自画像と肖像画の対比はありそうだとは思ったし、自画像は自分が描く、肖像画は他の人が描くので乖離するのは当たり前ではないかと思ったが、自分自身が持つ自分のイメージと他の人が持つイメージが離れていくところが見える表現である。
10 いざという時はニンニク味のガム(久21, 文5)
ドラキュラ以外思い浮かばない。危険な人からのキスの回避。インパクトがあり、視点が面白い。
ニンニク臭をガムで消す、の逆を言っているだけにように読んだので取らなかった。
対ドラキュラか。誰かとにかく嫌われたい人がいるのかもしれない。「ニンニク味のガム」でどのような「いざという時」か想像させられる。
11 洗うには惜しい婆さんの振る舞い(与3, 文1)
「婆さん」という言葉が乱暴。どう洗うのか、ちょっと想像出来なかった。
ナメタガレイをババガレイというように、婆には汚い人を表す意味も言葉にはある。でもその汚れは人間として懸命に生きてきたからこと付いたものもたくさんあるわけで、その懸命さが仕草に現れるおばあさんは素敵である。最近の要介護認定、介護予防などは、画一的で扱いやすいきれいな老人にする社会の洗濯のようなものであるが、それに対する批評と読んだ。
婆さんを洗うのだから介護。ご飯をこぼしたりおもらししたりだと思うが、それらを「振る舞い」と表現し、「洗うのが惜しい」と言っている。婆さんに対する愛を感じる表現。
12 面取りができてる穴をいつくしむ(与10, 文2)
「慈しむ」なのか「愛しむ」なのか。前半の流れから、わざわざ考えることもないのかと途中で諦めた。面取りした穴と言われてもピンと来なかった。
穴の句も多いが面取りの穴ははじめて読んだ。男にとっての穴は入ると怖いところだが、いつくしむ、で穴との距離感を感じ怖くない穴になった。この句の穴は自分にとって安心する場所なのだ。
第一感は女性器。いつくしむは自慰か。ペーソスを感じた。女性器ではないとしても哀しさがある。
13 初恋のおかげで狂ってもリズム(与9, 文11)
「初恋のおかげで」と「狂ってもリズム」の繋がりが見えず、こっちのリズムが狂った。「けんけんぱ」が「ぱーけんけん」になった感覚。
狂ってもリズム、は、腐っても鯛、と同じ読み方でいいのだろうか。普通なら「初恋のおかけで狂ってるリズム」で安定する文であるが、「も」にしたことで文章自体も不安定になってしまって、この不安定さも初恋のおかけなんだ、と読めて面白かった。
素直に読んだら初恋で狂うのだと思うけど、もともと狂っているところ初恋でリズムがでたとも読める。前者で読んで、「わたし」は本当はリズムなんかほしくなかったんだろうなと感じた。
14 壁越しの引退セレモニー静か(与14, 文21)
引退セレモニーはお葬式のことかな?と思ったが、それなら「葬」だけで表現できるし空気も違う。引退セレモニーに違和感を感じた。
卒園、卒業、退職、葬儀。と人生には節目節目でさまざまな引退がある。人知れずひっそりと消える場合もあれば、セレモニーをやって盛大に送ってくれる場合もある。壁越しであるから当事者ではないのだが、あまりに静かなセレモニーもどこか気になるものがある。日常的でありながら、ちぐはぐなセレモニーに、哀しい面白さを感じた。
現実のシチュエーションを考えると、隣の人がテレビで誰かの引退セレモニーを見ているのだと思う。「静か」が惜しい感じがするが、「壁越しの引退セレモニー」の強さでいただいた。
15 ラブホから撮った#イマソラ死んでいる(与11, 文4)
虚しすぎた。ことが終わってからの空だろう。
ラブホに入るとき撮った空か、出たとき撮った空か。自分は出たときと読んだ。死んでいるのは自分の生活。#イマソラはよくみるハッシュタグで、この句の自分はラブホで撮影した空をネットに流すことで生を確認しているのだろう、と読んだ。
#イマソラは今自分が見ている空を写真に撮って投稿する時のハッシュタグ。空は死んでいない。「わたし」が撮った空の写真が死んでいる。ここに感性の刺激があった。
16 あきらめの穴から運の首伸びる(久18)
開き直った感じがいい。穴からは出られないが、ちょっと首だけ出ちゃうという発想が面白い。そう言えば「運」ってこんな感じかな。轆轤首の先に私の顔が見えた。
これも穴の句。こちらは穴に入ったようだ。運の首、という造語より具象を書いた方かよかったのでは。
運って首あるんだっけ?から先に進めなかった。「あきらめの穴」も抽象的な表現だけにつかみどころがない。
17 このイヤフォンじつはなんにも聴いてない(久3)
読めば読むほど上位に上がっていった句。自己申告しなきゃ分からないことをサラリと言ってのけた。何を聴いてるのかなんて全く興味もないが、こう言われると急に気になってくる不思議。
こういう演劇を観た。劇中ずっと掛けていたヘッドホンは無音だった。じゃ何故聴いているのだと問われ、「いつか何か聴こえてくるんじゃないかと思って、、、」だったか。演劇にもあったということは思いつきやすい事象なのだろう。
話しかけられたくないから何も音を流していないけどイヤフォンをつけているという状況から発展しなかった。
18 宇宙もうちょいで出来ます独学で(久10)
宇宙の句を見るといつも梅崎流青さんの「伏せた茶碗の中の宇宙を知るや君」という句を思い出す。流青さんの宇宙は壮大だったけど、この句の宇宙は手が届く。小さい小さい宇宙なら独学でなんとかなる。「もうちょい」に声援を送りたい。
独学で宇宙をつくるのは面白い。神もきっと独学で創ったろう。で、伝えたいものが届かなかった。
宇宙が大きすぎる。ちょっと大げさというか、嘘くさいというか。「もうちょい」の軽さとかみ合わなかった。
19 褒め言葉ダウンロードをしそこない(久19)
ダウンロードしていないのだから、褒め言葉は無い。無いものは出せない。褒めたいけど褒められないのではなく、最初から褒める気がないときの言い訳。褒め言葉以外はダウンロードしているんだなと思うと、ついニヤッとしてしまう。
ダウンロードは新しい言葉だが川柳のつくりはわりと見かける構文。パターンがすべて悪いとはいわないし、普通の句会ではパターンに沿った川柳の入選も多いが、この句会ではもう少し遊んで欲しかった。
「褒め言葉」が「ダウンロード」に対して小さすぎる。ダウンロードをしそこなうという生活圏にある事象とは、生活圏にないことと組み合わせた方が主張が生まれると思う。
20 MikeからSAKEの臭いがする9月(久17)
「マイクから酒の臭いがする9月」でもとった。私は下戸だから、酒の臭いには敏感。カラオケのマイク、本当に酒臭いんだよ。「2月」でも「5月」でもとった。マイクを持った一瞬の臭いが蘇る。
よく、~時、~曜日、~月、の句を見るが、余程慎重にやらないと「安易、動く句、5月だとダメか?2月でもいいではないか」攻撃にあう。自分は下五に安易さを感じた。
(自句)4月はThis is a pen.と生真面目に簡単な英語に付き合ってくれていたMikeも夏休み明けには本性を現し始める。SAKEの英語表記も9月も必然。
21 親の腕子のつめあとが残る腕(久15)
「親」は詠みこむ必要はなかったと思うが、とても素通りできなかった。爪痕の深さを自覚しているのか。耳を塞いでも子供の叫び声が聞こえてきそうで、とても悲しくなった。
この句の自分は親か子か?立ち位置がはっきりしない分弱い。親に子の爪痕が残る反面子にも親の爪痕が残るわけで今はこちらの方が深刻な問題となっている。そこまで踏まえた世界観を書いてほしかった。
上五が説明的に感じた。強調だとしても、なくても親の腕とわかる。「親の腕」としたことで「わたし」が薄れた。
22 バラバラの血管つなぐ日曜日(久7)
日曜日のたびに開催される川柳大会。入選句の発表まで脳の血管はバラバラだ。没でも入選でも、とりあえず結果をもらうとつながる血管。私に重ねるとこうなるが、誰にとっても日曜日は特別で、感覚的に好きな句。
~曜日もの。バラバラの血管とは何だろう。平日人間関係で疲弊してバラバラになったこころを休日に繋いで自分を取り戻す、というように読んだが、バラバラの血管が言葉としてまた未熟なのと、日曜日が安易でないか確認して欲しい。
血管つなぐ」なので血管はまだバラバラのはず。自分の中で一番バラバラな曜日は火曜日だった。日曜日まで遠い。
23 なぞなぞが解けたら手巻き寿司になる(久8)
家に古びた意地悪なぞなぞの本がある。小さい子供がくると開くのだが、この本を一人でいる時に開いたことがない。「手巻き寿司」は団欒であり、孤独ではない象徴のようだ。大袈裟だけどそう思った。
ひとりではあまり手巻き寿司はしないと思うので、なぞなぞとは家族間にある問題と読んだ。家族間の問題が解決したら自分が手巻き寿司のような家族和気藹々となるようなものになりましょう、といってるわけだが、これは反語で、なぞなぞは解く気もないし、したがって手巻き寿司にもならない。やる気もないことを言って期待だけもたせる、典型的なよくないお父さん。
手巻き寿司はバラバラのものを自分でくるっと巻いて作るので、「解けたら」と逆のイメージだった。
24 引っ剥がすサンドイッチにある和平(久16)
パンと具を分けて、サンドイッチではないただの具材にするのではないか。平和にしなかったのは、サンドイッチの三角が見せかけのものだから。「引っ剥がす」が効いている。
サンドイッチにある和平がわからないが、コップの中の嵐、のような例えだろうか。見なくてもいいものをわざわざ引き剥がして台無しにする、といったことか。
平和は引っ剥がすことができそうだけど、和平なら別の言葉だと思った。
25 置いてけぼりからからからのペットボトル(与19)
はっきり正しい句を思い出せないが「空き缶コロリカンコロリ」的な句と重なり、手が出なかった。
からからからをどう感じるか。空っぽ、からからに喉が渇く、転がった音、などを想像して面白かったが、残念なところはリズムがよくない。下五が落ち着かないのでペットボトルでない方がよかったか。
道路でからからと転がっているペットボトルを思い浮かべたが、あたかも置いてきぼりにされているようなので表現に広がりを感じなかった。
26 空っぽになって弾んでみたい石(与8)
これも既視感あり。「石」じゃなかったと思うが、石までは一緒の句を見たか聞いたか作ったか…。
オーソドックスではあるが句としての主張があっていい。空っぽでもないし、弾まないし、、、、でもそれが自分なのだ。
単純に石が空っぽになって弾んだら割れると思った。石が弾んでみたいなら中身がつまったままの方が弾むはず。割れることを踏まえた表現とは思えなかった。
27 A.I.ども11111、決起(与2)
数字を調べると「エンジェルナンバー」と出た。恋愛で貴方の想いは瞬く間に現実化します!だって。AIに頼るなと言いたい。
オール1の世界にプラス1したらどうなるか。二進数が繰り上がるしゅんかんのエクスタシーを書いたのだと読んだ。桁数繰り上がりはオーバーフローの意味も暗示し、既成の器からあふれ出ることは既成世界の爆発である。なので決起、の言葉もぴったりあっている。ただ何故5桁なのか?4桁だと17音で収まりもいいが。
ぱっと見アルゴリズムのような印象を持った。ただ5ビットはA.I.に対して少なすぎると感じた。11111も決起の命令であれば半角の方が合うし、「、」もアルゴリズムの記号のルールに近いものを用いたほうがいいと思う。作為が前面に押し出された句なのにいろいろ中途半端で、もっと洗練された表現があるのではないかと感じた。情報処理に詳しい人なら適切に読めるのかもしれない。
28 マッサージされてだんだん傘になる(与5)
ゆっくり開いてゆく傘と、身体と心だろうか。「だんだん傘になる」という素敵な発想が「マッサージ」で消されてしまった。
マッサージされると自分の骨格を感じる。普段意識しない骨の硬さや曲がり具合まで意識する、肉を忘れて骨だけの存在になるのだ。句は骨になる、とは言わず傘になるとしたところによかった。傘には雨に打たれて「耐える」意味のあり、マッサージの痛みに耐える、人生の困難に耐えることにも通じる。
イメージとしての傘なんだろうけど、「マッサージ」が生活圏と近い言葉なので意味としての傘の骨しか思い浮かばなかった。
29 みずぎわ、とあなたの声で川が呼ぶ(与1)
呼んでいるのだろうが、私には異次元で対処出来なかった。「川」は必要だったのだろうか?
灯籠流しがあるように、この国では死者の思い出を川に流す。川は此岸と彼岸を分けているのだ。この句のあなたとは最愛の人であり、この世界にはもういない人だ。川でその人の思い出に耽っていたとき「みずぎわ」と呼ぶ声がする。川の水際、此岸と彼岸の境界線を見て、とあなたの声がしたのだ。わたしはそっと水際に近づく。
「みずぎわ」は「わたし」にとってピンポイントな場所のはず。「、」もピンポイントな場所を感じさせる。それに対して「川」が大きすぎると感じた。
30 ゆくりなく胎児で聞いた音に合う(与7)
「会う」だと思ったが違っているし「胎児で聞いた」に大きな違和感を感じた。母体ではダメなのか。「ゆくりなく」を使ったのは非常に良かったのに、もったいない。
ゆくりなく、という言葉は川柳ではみかけないのを選んだのがよかった。胎児で聞いた母の心音。ゆくりなく、音、は時間の流れを表した言葉だが、その時間の流れと合う別な鼓動を今体感している、と読んだ。
最初「会う」かと思った。胎児で聞いた音に合うのがなんなのか、旦那のいびきか、バイクの音か、あんぱんか、ミルクティーか、イメージがつかめなかった。
31 心臓にグラム八百円の肉(与15)
一次選では入選にしていたが、二次で落とした句。助詞で損をしている。「心臓は」だったら面白かった。
グラム800円は結構いい肉だがそのくらいが自分の心臓の値打ちだろうと。自分はその程度の人間だといっているように読んだ。自虐であるが自分の肉をましてや心臓をグラムいくらで、換算した川柳で面白い。
グラム七百円や九百円との句意の差を自分の中で消化できなかった。
32 USB検品する上杉謙信の末裔(与4)
発想は面白いが、破調が過ぎる。もう少しまとめられないものか。大きい具象を置いて小さいことを詠むのは焦点が絞られて良いと思う。私も誰かの末裔で、ちまちま作句している。視点だけでは入選に出来なかった。
戦国武将の末裔が、USBの検品作業をしている、という着想が面白かった。何故上杉謙信かとも考えたが、上杉家は徳川に120万石から30万石に減封され米沢藩で辛酸を舐めさせられた。米沢藩の壊滅的な藩財政を立て直したのが上杉鷹山の時代であり、倹約勤労に勤め財政を立て直した。その上杉家の末裔であれば今でもUSBの検品くらいはしているのであろうと思った。また現在の山形県米沢市にはNECの工場があり、パソコンの組立製造を行っている。
『上杉検品』で言いたいことのほとんどをカバーできるのではないか。『ユエスビ検品』はちょっと強引で、もっとスマートに作為を示せないものか。あとUSBは規格なので厳密には検品できない。USBメモリ、フラッシュメモリの略称としてのどの程度定着しているのかも考えた。
33 厳格なせっせっせのよいよいよい(与20)
最後まで悩んだ句。厳格な人の手遊びは面白いと思ったし、この流れには共感するが「せっせっせのよいよいよい」があまりにもスペースを占めていて、あと一歩のところで落とした。
吹き出した句。ネットでよくみる正義バカ(自分が正しいと思うと相手にいつまでもまとわりつき議論をしかけてくるバカ)を皮肉ってるようで面白い。
な」が「に」だったらどうかを最初に考えた。「厳格な」では説明的に感じた。
34 水星に火曜日が来る世襲制(与16)
申し訳ない。私の頭では、この句は全くをもって理解出来なかった。曜日と星が、点と線みたいにどこかで交わるのだとしても、なんで「世襲制」?逆に聞きたい。
~曜日もの。水星を持ってきたところが面白いが、金星でも木星でもいいじゃない、とやはり思う。でも世襲制なのは水星だけなのだろう。
木曜日じゃないんだ、が第一感。「水星に火曜日」と「世襲制」の関係がいまいちつかめなかった。面白い表現だとは思ったけど、「水星に火曜日」は狙いすぎかもしれない。
35 メタセコイア並木の海で溺れたい(与6)
メタセコイアは学校の校庭にあった記憶があるが、並木と海の重なりに無理を感じた。でも美しい風景は伝わってくる。美しいだけでは物足りなさを感じる。
滋賀県高島市マキノ町に約2.4キロメートルにわたる500本のメタセコイヤ木があり11月頃きれいに色づく、らしい。写真で見ると息を飲む美しさだ。こういう「他人が何て言おうと自分がいいと思ってる世界」を書く川柳はいい。自己主張があって。
吉川晃司を思い浮かべた。歌謡曲の歌詞にありそうなフレーズだと思った。
36 めしはこぼれるししょんべんはもれるし(文14)
「こぼれる」「もれる」散々ですね。としか言えない。真っ直ぐで分かりやすいが、分かりやす過ぎた。
めしもこぼししょんべんをもらしてから、どう楽しく生きていくかを書くのが川柳だと思っているので、この書き方では甘い。この世界を書きたいならシルバー川柳も読んでほしい。
既視感はあるが、「し」の繰り返しと全部ひらがなである点が主張に効いている。
37 現地の人も知らないムラサキイモ(文20)
赤霧島(焼酎)がパッと浮かんだ。特別なムラサキイモが本当にあるのかもしれないが、17音字ならこれでも大丈夫だよっていう内容でも無いのではないか。
地元の人が知らないものは結構あったりする。ムラサキイモは県外に持ち出してはいけない県もあり、現地の人が知らない芋ならば、知らずに持ち出されているだろう。そのような危険を書いたのだろうか。
実際は現地の人は知っていると思うが、決めつけが面白いと感じた。現地とムラサキ(村裂き)も効いていると思う。
38 失恋のパパは毎晩プロポリス(文6)
プロポリスの喉飴はめっちゃいいです。ちょっと高いけどね。この句は子供目線で可愛らしいと思ったが「パパは何やってんだよ」とママ目線でボツにした。
パパ活を書いたのか。とすれば毎晩プロポリスで消毒しているのであろう。ただプロポリスは性病感染を抑える効果はないようだ。
プロポリスは巣をばい菌等から守るために塗りつけられる。パパの失恋を知っている子供とパパとの関係性も面白い。ポリスのコスプレをしたプロのネーチャンかもしれないが。
39 骨盤をポケットにして人でいる(文18)
自句)挑戦するといつもこーなる。入り口は使ったことの無い言葉で斬新に行こうと意気込んでいるが出口が平凡。ごめんなさい。
骨盤がポケットというのは女性的。税関で、麻薬を隠してるらしい女性をいろいろ調べても何も出てこない、何故だ。という不思議さが女性の骨盤にはある。下五が弱い。
下五で陳腐になってしまったが、骨盤の形を捉えていると思う。
40 煙突の無い町を描く水彩画(文19)
この句は誰が書いたか知っているのでコメントは控えます。
時実新子の「凶暴な愛が欲しい煙突よ」の返歌ではないか。新子のこの句はあざとくて好きな句ではないが、この句は女のどろどろをさらりとかわしたように読める。が全体の中では地味な印象だった句。
既視感はあるし、水墨画の方が合うとも思ったが、水彩画には水彩画の主張がある。
41 シャングリラお肉が肉でできている(文10)
当たり前のことが当たり前ではないことを句にするのは以外に難しい。お肉じゃなきゃダメだったのかな。
シャングリラ、より酒池肉林の方が句意がはっきりするのでは。
肉を培養する研究が進んでいる。「お肉が肉でできている」という当たり前のことが理想郷でしか起こりえないことになる未来も遠くないかもしれない。もうすでに私たちが食べている肉は、肉と思っているだけかもしれない。
42 したあとの嘘で湿っているボタン(文3)
したあと…ですか。なにも無かったように服を着るときの少しの罪悪感。アレじゃないなら、上五はなんとかならないものか。
良心の呵責、であろう。8音で書けることをわざわざ17音で書く必要があるか。あるとすれば、8音以上の何を伝えたいのか書き手は確認してみよう。
ピロートーク的なことと思うが、「湿っている」が嘘に反応する身体と、嘘で悲しんでいる心の二重に効いている。ボタンを押されてもう一回するのだろうが、大切なものを留めている心のボタンはまた一つ外れるだろう。
43 責任を鳴かない鳩に押しつける(文15)
平和を詠んだものだと思ったが「責任」によって内容がぼやけてしまった印象。鳴かない鳩=叫ばない民衆。
川柳ではよくみる構文。パワハラを書いたものと読んだ。自分が責任を押し付けた側の句なので共感しにくい川柳ではある。
ありそうな句だなというのが第一感だったけど、鳴かない鳩見つけるのって結構難しいだろうなぁと考えると主張があると判断した。

「評の比較:50万アクセス句会」への3件のフィードバック

  1. 締め切りの15日に滋賀県マキノ町にメタセコイア並木を見にいったんです。この頃のウエブ句会は言葉選びがよくわからなくなっていたので、
    どうかな?と思いつつ投句。
    与生さんに採っていただきありがたかったです。
    W介護で疲弊している気持ちが上向きました。
    ありがとうございました。

    1. コメントありがとうございます。
      今後もご自分のペースでご投句いただけたら幸いです。よろしくお願い致します。

  2. 久美子さんと与生さんにはご多忙の中丁寧な評をいただきました。ありがとうございました。

    現状のペースだと10万アクセスは2か月ちょっとで期間が短すぎるので、次回アクセス記念句会は777,777アクセス達成時とします。

    ライブ句会で兼題4題、席題1題を予定しています。または兼題を減らして視聴者参加型の議論の時間を設けるかもしれません。要項が決まり次第おしらせします。次回もお楽しみに!

    【2019/1/31追記】
    777,777記念句会要項は50万と同じにし、選者に樋口由紀子さんに加わっていただき4名共選で実施します。

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